入れ歯の装着後
・入れ歯を装着して噛むといたい。
入れ歯と密着する歯や歯ぐきの型を取って、入れ歯の内面をその形に合わせただけでは、咬んで痛いなど何らかの症状が出てしまうことがよくあります。
型取り材の若干変形が避けられないことも理由ですが、そもそも粘膜の位置や厚みや内部の骨の状態によって、強い力が掛かっても平気な部分と、弱い力でも痛くなってしまう部分があるからです。
完成時にある程度はそういった状況を予想して調整してお渡しするのですが、ご自身で使ってみると改良箇所が新たに分かることが非常に多いです。
そのため新しく完成した入れ歯はしばらくは使用感をフィードバックさせていただき調整させていただくために来院いただく必要があります。ご理解のほど宜しくお願いします。
また使用したら痛かったので次の受診までまったく使用しなかったという場合がありますが、そういった使い方をされると使用後の口の中の粘膜の変化が分からず、調整が進まなくなってしまいます。
新しい入れ歯が入ったけれども使ってみたら痛かった場合でも、次の来院の直前には少しでもいいので使用して食事をして下さい。痛い場合は使用頻度を減らしていただく分には構いません。
・入れ歯を外しづらい。装着しづらい。
入れ歯の付け外しというのは初めての入れ歯の場合、今までの人生の中でやったことがない行為だと思います。コツがいるのですが、慣れてくると医療者が外すよりもご本人でスムーズに外せるようにまで上手になります。
最初は時間がかかるかもしれませんが少しずつ慣らしていくようにしてください。
また初めての入れ歯の場合着脱慣れしていないので入れ歯の金具をあえてゆるめにして付け外しし易くすることが多いです。その分緩く感じてしまうかもしれませんが、言っていただければ慣れた頃にきつく致します。
入れ歯はきつすぎると着脱が大変だったり、金具がかかる歯の締め付け感が強く感じたりします。
逆にいればが緩すぎると、食事や会話の際に外れやすくなります。
どのくらいの入れ歯のきつさが丁度いいかは歯の状態や手先の運動の障害の有無などによって異なります。ご本人にとってちょうど良いきつさを一緒に考えていきたいと考えておりますので御相談ください。
入れ歯は元々はプラスチックと金属の塊ですが、自分の歯の代わりとして使っていただくものです。
体としては元来異物となるものなので違和感がどうしてもあります。
・歯にかかっているバネがゆるい。
部分入れ歯は残っている歯にバネをかけて固定して使っていただくものです。金属のバネは使っているうちに締め付けが緩んでいってしまいます。
金属の特性のためどうしても起こってしまうものですが、バネを曲げ直せば比較的容易にゆるさは改善できることが多いです。
ゆるく感じる原因が入れ歯の破損であることもあります。その場合は修理もしくは作り直しが必要になります。
・頬や舌をかんでしまう。
入れ歯が入るまでそれなりの期間は、一部で天然の歯も人工の歯も入っていなかった状態でお口を使って戴いています。
その部分に歯がないという状態に体が適応してしまい、頬や舌がその辺りを自由に動ける状態に慣れてしまいます。
入れ歯が入ると急にその部分で噛めるようになるので、間違って頬や舌を噛みやすくなってしまいます。入れ歯が入って噛める状態に体が慣れるまで少しお時間がかかります。
・入れ歯で噛んだときの音が気になる。
ご自分の歯と素材が異なるため噛んだ時の音が違うのはある程度やむを得ないことです。まずは慣れるかどうか使ってみて下さい。
音を減らすことが出来る場合もありますが、咬む機能が落ちてしまうことがあるため積極的に減らす調整をできるケースはあまり多くはありません。
・前歯で噛むと入れ歯がはずれてくる。
総入れ歯の場合、入れ歯を固定する残存歯がないのに落ちたり浮いたりしないようにするには入れ歯にかかる陰圧を利用することが必要になります。
吸盤が固定されるのと原理的には同じようなものになります。
顎の形の関係上総入れ歯の場合、前歯だけで噛もうとすると入れ歯の陰圧が解除されてしまい、外れてしまうことが多いです。
総入れ歯の場合はなるべく奥歯で噛むようにすることが基本になります。その分入れ歯自体の前歯のかみ合わせの機能もあえて高く設計しないことが多いです。
・金具の見た目が気になる。
残存歯に金具をかけて入れ歯を固定する部分入れ歯の場合、金具はなるべく見えづらい部分に配置するのが基本ですが、残っている歯が少ない場合はそもそもそういった選択の余地がほとんどない場合もあります。
ある程度仕方ないものと割切るか、保険外治療になりますがノンクラスプデンチャーという金属をまったく用いない、もしくは見える部分に用いないものを作るなどの選択肢があります。
・金具が錆びてきた。
入れ歯の金具は耐食性が大変高い材料です。基本的に錆びて劣化するということはありません。
ただ、表面に不動態膜という金属化合物を作ります。それは入れ歯洗浄剤を使用したり長期間使用しているとどうしても生じてしまうものです。
金具の性能に異常はありませんので心配しないで使っていただくか、くすんだ色が気になるようであれば洗浄いたします。
・入れ歯が壊れてしまった。
人がかみ合わせるときに実はかなり大きな力がかかります。入れ歯もなるべく強度を確保して作っておりますが、毎日何度も大きな力を負担しているため、どこかで壊れてきてしまうことは避けられません。
修理が可能であれば修理いたしますので御相談ください。ただ修理では完全な回復が困難である場合や修理不可能な場合は作り直しがお勧めになります。
・修理したところの見た目が気になる。
壊れた入れ歯を修理する場合、その場で修理しようとすると継ぎ目が多少見える状態になってしまいます。技工所で時間をかけて修理するとある程度目立たなくできます。
ただし技工所の修理はお預かりが必要で時間も多少かかります。入れ歯は基本的には毎日お使いになるものですので、即日の修理をすべきと考えて基本的にはその場で修理を致しますが、継ぎ目が見えづらいという要素を優先されご希望される場合はお伝え下さい。
また修理の内容によっては即日の修理ができない破損もございますのでご理解のほど宜しくお願いします。
・しばらく使っていたら入れ歯がゆるくなってしまった。
実は歯が抜けた部分の歯ぐきの形は一定ではなく経年的に少しずつ退縮しています。
そのため、入れ歯作成時にどんなにぴったり作っても長期的には隙間ができて緩くなってしまいます。
その場合は隙間が出来た分だけ入れ歯の内面を足したり作り直しをすることで対応することが多いです。そのような症状があった場合は御相談ください。
また先に述べたように残存歯にかける金具が緩くなったことが原因のケースや金具が壊れてゆるくなったケースもございます。