top of page

むし歯の治療後

アンカー 15

・治療したところがしみる。

 歯の内部には歯髄という神経を豊富に含んだ組織があります(患者さんには「歯の神経」とお話することが多いものです)。歯がしみるという時にはその神経が刺激されて出る症状であることが多いです。

 むし歯を除去する治療を行った場合、多少なりとも歯に歯髄に刺激があります。1度刺激があった部分はしばらく敏感になってしまうという人体の性質があります(疼痛閾値の低下)。

 なのでしばらくはズキズキしたり、しみやすくなったりすることがあります。

 また、歯を削った部分で歯が少なくなっているので、その分だけ歯髄を覆っている歯の厚みが減っています。詰め物や被せ物が入ると症状が治まることがありますが、金属は熱伝導を起こしやすいので、しばらくはそれが原因でしみやすくなることもあります。

 さらに仮のつめものや被せ物をした場合、仮のものは次回治療の際に簡単に取り外しできないといけないので本番のものよりも隙間が多いためしみやすい傾向があります。

 本番の装着物の場合もセメントに歯髄を一時的に刺激する作用があり、しばらくはしみやすい症状が出る場合があります。

 深いむし歯の場合、歯髄を残すか除去すべきか(抜髄)は悩ましいことが多いですが、歯髄は残した方が歯の寿命は長くなる傾向があります。

 そのため歯髄を除去すれば治療後のしみる症状なども出なくなるのですが、しみる症状が出る可能性が高いとしても、歯髄を残せるのであれば残すべきだと考えておりますのでご理解のほど宜しくお願いします。

 また、むし歯の深さが歯髄の治療をしなければならない深さの境界線上の場合、1度は歯髄を残す治療をしたけれども、後になって神経の治療をしなければならない状態と発覚する場合がございます。

 これも神経を残せる可能性があるものは保存するという考えでの治療では、まれに起こることはやむを得ないケースになりますのでご理解のほど宜しく致します。

・詰め物や被せ物をいれたところが圧迫感がある。

 健康な歯はほとんどの場合、歯と歯の間が50ミクロン程度の隙間しかなく、ほとんどぴったりくっついている状態です。詰め物や被せ物の治療でも同等程度の少ない隙間にすることが多いです。

  むし歯の治療時に型を取って、後日作ったものを装着する場合に、完成までの間は治療した歯に仮の被覆物を入れます。仮の被覆物は健康な歯や本番の詰め物と比べて材料の性質が柔らかいため隙間が緩くなってしまいます。

 つまりしばらくの間仮の被覆物が入っている歯は、隣の歯との隙間が少し緩んだ状態に適応してしまいます。そのため本番の詰め物や被せ物が入った直後は、急に歯と歯の間がきつくなったことにびっくりしてしまい、圧迫感を感じてしまいます。

 この圧迫感は数時間〜数日で人体が適応することがほとんどのため心配いりません。

 逆に言えば、装着した直後でも圧迫感や不快感が無いように調整してしまうと、歯と歯の隙間が標準よりも大きくなってしまい、食事の際に繊維質の食べ物が挟まりやすくなってしまいます。そのため直後の圧迫感があることを承知の上で望ましい隙間の大きさで装着しています。

 ご理解のほど宜しく致します。

 

・治したところの表面に違和感がある。

 基本的にむし歯を削る治療の場合、削った部分は何らかの人工物を入れて形や機能を回復させます。歯の表面はエナメル質や象牙質と言った人体が作った硬い組織でできていて、顕微鏡レベルで細かい構造をしています。

 さらに使っている内に少しずつ擦り減りますが、それぞれの人の習慣や年齢などによって擦り減り方やパターンが異なります。

 人工物で修復した部分は可能な範囲で研磨しますが、やはり人工的な別の物質で治しているので、意識して確認すると表面に違いを感じてしまいます。また人口的な研磨と自然な摩耗は表面性状が異なるため磨いても完全に同じにすることはできません。

 材質によっては硬化が治療日当日に終了しないものがあり、後日改めて研磨すると違和感が改善することがありますので、気になる場合は改めてご来院いただきますよう宜しくお願いします。

 

・治したものはどれくらい持ちますか?交換時期は?

 治療後どれくらい持つのかは歯やかみ合わせの状態、セルフケアの良し悪しがあるので一概には言えませんが、基本的には数年〜数十年持たせるよう意識して治療しております。

 仮に詰め物や被せ物を装着してから長い年月が経っていたとしても、それだけを理由に装着物を交換することは推奨されないというのが各種学会の専門家の意見の多数派になっており、当院でもそのように考えております。

 なのでご本人としても問題ない、われわれが診ても問題なさそうな詰め物、被せ物は長い年月が経っていたとしてもそのまま使っていただこうと考えております。

・治療で使った光の体への影響は?有害な紫外線は入っているのか?

 

 治療中に青い光を照射することがありますが、これは歯科用光重合レジンという材料を硬化させるために使用しております。この光はただの可視光線の青い光であり、光の照射をしている機械もただの高出力青色LEDなので、特に体に害はありません。

 しっかり固めようとすると強い光が必要になりますが、強い光は吸収時に熱を発しますので光を当てている時に少し熱く感じるかもしれませんが、赤外線ヒーターが暖かいの同じ原理なので熱い感じがあったとしても、それも有害ではありません。

・治したところの境界が気になる。

 詰め物の場合、歯を削った方が良い部分だけを削り、削った部分に人工物を入れて歯の形を修復します。つまり修復した歯の表面には削っていない歯の表面の部分と人工修復物で覆われている部分が存在します。上のQ&Aで記載したように天然の歯と修復物では表面性状が厳密には異なるので、特に装着直後は境界が気になってしまうことがあるかもしれません。

 小さな段差がある場合、その段差を研磨すると症状が改善することもありますので気になるようであれば一度見せていただくと良いかも知れません。

・治した部分の色が気になる。

 むし歯治療をした歯はなるべく違和感がないように周りと色を合わせるように致しますが、周りが色を合わせるのが難しい色をしている場合や、非常に高いレベルでの色合わせをご希望の場合、予め用意されている色を使用しての治療では不十分かもしれません。

 また現在では保険診療でも金属を使わない白い修復の選択肢が多くなっていますが、条件によっては銀色の修復物が適応になることもあります。

 そういった場合は保険外のオーダーメイドで色を合わせて作る治療が適応になってくるかもしれません。

・被せ物をした後に、付け根に黒っぽい帯が見えるようになった。

 歯は口の中から見える部分だけでなく、歯ぐきの中にもかなりの深さの歯根が埋まっています。土の中に埋まっているダイコンのように考えて貰えば良いと思います。

 歯ぐきは歯周病で経年的にある程度下がってしまうと言われており、その他に歯ブラシの圧が強すぎたりすると下がってしまいます。ものすごく歯を綺麗にされているご年配の方でも若干は歯ぐきの下がりはあり、まったく下がらない人はほぼ皆無です。

 被せ物を入れる時に歯ぐきの上の部分を完全に覆っていても、経年的に歯ぐきが下がると後から下がった部分では被せ物で覆われていない歯根が露出してしまいます。

 歯根表面は比較的暗い色をしていることが多く、そもそも被せ物をしている歯は神経を取っている歯の場合が多いため、被さっていない部分は暗い色をしていることが非常に多いです。

 被せ物をしている歯の歯ぐきの知覚に暗い色の帯が見えていても、全てのそういった歯を絶対に被せ直しをしなければならないわけではありません。

 しかし、見た目上の色が気になったり、被せ物で覆われている部分と覆われていない部分の境界が気になったり、境界が磨きにくかったり、被せ物が覆われていない部分が摩耗してしまったりすることがありますので、被せ直しをした方が良い場合もあります。

 気になるようでしたら御相談ください。

・むし歯治療後に歯茎から出血していますが大丈夫ですか?

むし歯は歯ぐき近くにあるときや、詰め物や被せ物を歯ぐきの上から見えるところ全て覆いたい場合には歯ぐきを触りながら歯を削らなければならないことがあります。そういった場合には治療中や治療後に歯肉出血は避けられません。

 またキュレッタージと言って被せ物をするときには被せものが入るための形を整えるだけでなく、被せ物と歯の境界あたりの歯ぐきの調子を被せる前に整える必要があり、削ると歯ぐきが出血するような場所まで削ることが必要と言われています。

 当然のことながら出血させないことだけを考えれば出血は少なくなりますが、より良いむし歯治療を目指そうとすると、仕方なく出血してしまうものなのでご理解のほど宜しくお願いします。

・むし歯がないか不安なのですべて確認してもらえませんか?

 むし歯の検診で受診される方も多くその必要性があることは周知の通りなのですが、むし歯がないか隅々まで確認するというのは話が少し複雑になります。

 むし歯は歯科医師が視診すれば大体は見つけることができますが、視診による検診を行っても、見るだけでは全てを確認できないことがあります。

 詰め物や被せ物の中でむし歯になっている場合や、歯と歯の間で視診ではどうしても見えない位置のむし歯や、表面は正常なのに深い部分だけで進行しているむし歯などがそれに当たります。

 レントゲン写真を撮影するとそういったむし歯を見つけることができることがあります。ただレントゲン写真でもすべてを診断できる訳ではありません。

 CTを撮影するとレントゲン写真で見つからなかったむし歯を見つけることができますが、それでも全てとは言えません。

 詰め物や被せ物を除去するとむし歯が見つかることもあります。

 つまりむし歯の検診で来院いただいた際に、際限なくできるだけむし歯を見つけようとすると、自覚症状もないのにCTを撮影したり、問題なく機能している詰め物や被せ物を全て外すという話になりかねません。

 当然ながらそういった検査は推奨されておらず、当方しても行うつもりはありません。私が言いたいのは「最大限の努力をしてむし歯を見つけようとする」のはあまり良い方法ではなく、「大変なことをしない範囲でできるだけむし歯をみつけようとする」というのが良いということです。

 

 現実的には視診とレントゲン写真を撮影するところまでが推奨されています。

 レントゲン写真も全て撮影するのは時間もかかり大変であったり、問題ない範囲ですが放射線が無いわけではないので、本人の希望があれば撮影させていただくという対応をしております。

 むし歯の検診でご来院する際にはレントゲン写真での検診を希望するかどうか考えていただき、撮影をご希望であれば申し出て下さい。

 またむし歯のチェックというのは上記のような性質のものであり、むし歯の検診の後にあまり時期を置かずに新たなむし歯が見つかることが稀ではありますが、あり得ることだと言えます。

 そういったことが起こるとがっかりされてしまうので、できるだけ避けたいとは考えておりますが、上記の通り検診にはどうしても限界があるので、そのようなことが起こってしまった際はご理解をいただければ幸いです。

・黒く見える部分を治療の必要はないと言われましたが大丈夫ですか?

 今の学問的にはどんなむし歯もすべて削らなければいけないとは考えられていません。むし歯は軽症の場合は再石灰化と言って体が勝手に修復してくれる場合があります。

 歯が少し黒くなっている部分でも再石灰化していて進行が止まっていると思われる軽症のむし歯の場合は、削らずに様子を見る方が良いこともあります。

 ただし、黒っぽくなっているのが見えてしまうので見た目上気になるという場合はそういったむし歯でも積極的に治療した方が良い場合もあります。

 詰め物を詰めた部分の境界が着色してしまった場合にも同じ事が言えます。

・一回で治療が終わるむし歯治療にすることはできますか?

 小さなむし歯の場合、コンポジットレジン充填という治療が最もよく選択されます。

 むし歯を除去した直後に詰め物を入れて固めると治療が終わるので一回で治療が完了しますし、歯を削る量も最小限で済みます。保険内の治療ですし、歯と同じ色で修復できるので患者さんにとってメリットの多い治療です。

 ただし、むし歯の場所や大きさによっては、その材料では強度が不足していてすぐ壊れることが予想される場合や、むし歯の位置的に操作が難しいため口の外で作らないと元の形に戻せない場合には、型取りをして2回以上かかるむし歯治療にしなければならない場合があります。

 また自分の歯の部分が将来的に割れてしまうことが予想される場合に歯の表面を保護する治療などにも不向きです。

 一度で治療が完了するコンポジットレジン充填という治療で問題ない場合は積極的にそちらを採用しておりますので、むし歯の治療が一度で終わりにできないと言われた時はそういった理由があることをご理解のほど宜しくお願いします。

 

・金属の部分を全部白いものにしてもらえませんか?

 ここ数年単位で保険で作れる白い被せ物が使える範囲が広がっています。

 以前は保険治療だと銀歯しか作れないと言われたり、表側は白いけれども裏側が金属のもので作ったりしていた部分も、今は金属を使わない白い被せ物で作れることが多くなっています。

 

 しかし、かみ合わせの強い部分の詰め物であったり、歯の状態が不利な状態であったりすると、保険の白いもので治してもすぐ破損してしまうことが予想されるケースがあります。そういった部分は金属で治療するか、もしくは保険外治療のセラミックで治療することが適切な場合もあります。

 一部の奥歯やブリッジも保険内では金属を使わなければ作れないので、今の保険診療では「金属の使用を減らすことはできるようになっているけれども、まだまだ必要なケースも多い」という状態です。

 保険外診療で使えるジルコニアという材料は歯にそっくりな色でありながら、金属と同等レベルの丈夫さを持っているので、それを用いるとブリッジや一部の奥歯などもすべて金属をなくすことはできます。

 上記のとおりむし歯治療した部分を白くしたい場合に、どうすれば出来るかはケースバイケースになってきますので気になっているようでしたら御相談ください。

・神経の治療した後の歯なんですが、詰め物で治りませんか?

 歯の神経の治療(抜髄)を行った歯は、歯の神経が残っている歯よりも脆く折れやすくなると言われています。

 歯が割れると、割れ方によっては抜歯以外に治療のしようがないケースがよくあります。なので歯の破折を予防することは非常に大事なことになります。

 神経の治療をした歯を詰め物で治すと長期的には破折して駄目になってしまうことが予想されるため、詰め物で治せるくらいの小さなむし歯の穴だとしても、あえて全体を削って歯の表面を硬い人工物で覆ってしまう被せ物にすることが多いです。

 歯を削る量を最小限にするというのは神経がある歯にとっては望ましい治療ではあるのですが、神経を取ってしまった歯に関しては削る量を減らすことよりも、割れるリスクを減らすことが大事なるので、あえて被せ物にする場合多いです。

 また神経を取った歯は長期的に段々と他の歯と比べて灰色っぽい色に変化してしまうということも被せ物にした方が良い理由になっています。

 ただし、歯に力がかかる部分を詰め物で全て被覆できる場合や、噛み合う相手の歯が入れ歯の場合、揺れていて強い力がかからない歯などには必要に応じて詰め物で対応させていただくことがあります。そのあたりはケースバイケースの対応となっております。

アンカー 1
アンカー 2
アンカー 3
アンカー 4
アンカー 5
アンカー 6
アンカー 7
アンカー 8
アンカー 9
アンカー 10
アンカー 11
アンカー 12
アンカー 13
アンカー 14
bottom of page