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保険の白い被せ物と排ガス規制

 ここ数年は保険で白い被せ物が作れるケースが増えています。自然な見た目の歯になるのでとても良い事ではあるのですが、昔から保険外で白い被せ物を作る技術があったにも関わらず、なかなか保険適応されてきませんでした。

 ここ数年で急速に保険適応が広がっており、今年の4月にも詰め物などでさらに適応が広がるのではないかと言われています。

 なぜ急にかと言われると、あくまで噂レベルでしかありませんが、様々な要因が指摘されています。


 1つは、レジン系の材料でそれなりの強度がある被せ物が作れるようになってきたことです。白いかぶせものの材料と言ってもセラミック系とレジン系の材料があって、昔はセラミック系しかありませんでした。レジン系の材料は日本の企業が世界的にもリードしているので保険適応が通りやすいという政治的背景があるのではないかと言われています。


 もう1つは金属よりも白い材料の方がデジタル化に移行しやすいことです。語弊があるかもしれませんが、3Dプリンターのような機械でデジタル上で設計して、機械に形を作らせることが金属ではかなり制限がありますが、セラミック系やレジン系だとほとんどのことがデジタル上でできるようになっています。

 逆に言えば、白い材料も保険適応しないと日本の歯科技工の世界はいつまでもアナログなまま世界のデジタル化に置いていかれてしまうという懸念もあったのではないかと言われています。


 一番の原因と言われているのが金属価格の高騰です。保険の金属で良く使われる材料に金銀パラジウム合金というのがありますが、その全てが資源価格高騰のあおりを受けて、値段が高騰しています。

白い被せ物の材料もそれなりのコストがかかるのでなかなか保険適応されてきませんでしたが、金属価格が数倍に跳ね上がってしまったせいで、保険の金属が決して低価格の治療ではなくなってきています。医療費抑制のために白い被せ物が保険適応されてこなかったとしたら(実際の理由は不明ですが)、現在ではその根拠が失われているということになります。


 全体的に金属の価格はすべて上昇しているのですが、中でも顕著なのがパラジウムです。保険で使われる金属は、金銀パラジウム合金、銀合金、コバルトクロム合金、純チタンなどがありますが、金銀パラジウム合金の原料価格の価格上昇が他を圧倒しています。

 なぜパラジウムの価格がここ数年急騰したかというと、自動車の排ガスを浄化するための三元触媒という材料の原料になっているからです。

 PM2.5などの大気汚染が世界的にも問題になった影響で、世界的にパラジウム触媒を搭載した車を作るようになったので、需要が大きくなり価格が急騰しました。

 逆に言えば一昔前は発展途上国では排ガス規制が緩かったため、貴金属の触媒を使った車をあまり生産してこなかったということでもあります。先進国と発展途上国で車の排ガスの問題の深刻度が大きく異なっていたのはそのあたりが原因でもあります。


 歯科治療を行う側としては保険内の治療でも以前と比べて詰め物、被せ物をする際にかかる料金が上がってしまったのは心苦しい点はありますが、保険でも見た目が自然な治療をできるようになってきたことをポジティブに受け止めて、より良い治療を心がけていきたいと存じます。


   大利根小板橋歯科医院 歯科医師 小板橋敦

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